乙一『暗いところで待ち合わせ』(幻冬舎文庫)

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)

 自分は一生、暗闇の中で一人、生き続ける。それで問題はない。自分は何も見ない。それ以上に、心をかき乱すことなく穏やかに生きられる方法などあるだろうか。
 自分のやるべきことは、外に出ないで、いつも家にいることだ。そうしているかぎり、何かにあこがれたりすることはない。あこがれないから、得ようとして手をのばしても届かないとき、胸が苦しい気持ちになることもない。